ソフトバンクの携帯事業に芽はあるのか

2004/06/25

t f B! P L
ソフトバンク株主総会、「携帯電話事業には必ず参入する」と孫社長

ソフトバンクが事業参入して、果たして勝機はあるのでしょうか。

Yahoo!BBの成功は、業界では当たり前だと思っていた固定概念を覆したところからはじまりました。すなわち、電話網は「音声」を「確実」に流すという固定概念を壊し、「IPトラフィック」を「そこそこのレベルで」流すという方針を打ち出し、低コストの通信網を築いたことが、成功の鍵でした。

さて、翻って携帯電話業界です。Yahoo!BBでの成功、ブランド価値を考えると、安価な携帯電話というポイントで参入してくることは間違いないと思います。ユニクロ・マクドナルド・吉野屋の例で見ればわかるとおり、安価であることをうたい文句にしたブランドは、常に安価であることを消費者に望まれ、それを追求し続けなければいけないという宿命があります。ユニクロはカシミヤ等で客単価を向上していますが、やはり「この品質にしては安い」という、コスト優位性に立った製品戦略をとりつづけています。

では、携帯電話業界で同様の戦略はあり得るのでしょうか。

携帯電話の価格は、端末価格と月々の料金から成り立ちます。このうち、消費者から見てわかりやすく、圧倒的な訴求力があるのは、月々の料金の方でしょう。NTTドコモ、au共に3000円、4000円前後での定額パケット料金を打ち出してきていますが、実際に基本料金等を入れると8000円とか1万円になってしまいます。この金額をトータル4000円などにすれば、Yahoo!BBの再来のようなインパクトがありそうです。

ところが、今の携帯電話業界の料金構造は、月々の料金に端末価格が上乗せされているという現状があります。今、売っている携帯端末を普通にメーカーが販売すれば、最低5万円はします。そこでインセンティブを設定、端末は安く売るかわりに、月々の料金に上乗せして回収しようというのが、今の携帯電話料金体系の基本思想です。短期間での機種変更が嫌がられるのはそういう訳があります。

となると、ただ単に月々の料金を下げようとすると、端末インセンティブを廃止するか大幅に引き下げる必要があります。そうなると、店頭での端末価格にダイレクトに反映されます。『新規・機種変更共に5万円』の携帯電話を好きこのんで買う人がいるとは思えません。

さて、どうするか。

一つのシナリオとしては、「端末をもたない」というのがあります。端末は他のキャリアで買ってもらい、それをそのまま使えるようにするというやり方です。技術的・法的な問題は山積みでしょうが、もしもできるようになれば面白いことになります。

もう一つのシナリオとしては、「安い端末に特化する」というのがあります。この場合のメインターゲットは法人利用でしょう。

実はカメラやSDカードがついた携帯電話というのは、企業の情報漏洩の大きなセキュリティリスクになり得ます。できることならば、カメラ付き携帯は会社に持ってきてほしくない、ところが、今やカメラがついていない携帯は存在しない時代。まさか営業マンに携帯電話を持つなとは言えないし、かといってセキュリティはどうれば…と、各企業の担当者は頭を悩ませています。

この層に「安くて安全」で売り込みをかければ、ある程度の需要は見込めそうです。証券・銀行あたりが全社一括導入なんてのも考えられるかもしれません。

問題は、ソフトバンク自身がセキュリティに関してはイメージがあまりよくないところですね。「おまえに安全を説かれたくない」と言われてしまいそうですね。

さて、シナリオとして考えやすいのは後者の方なのですが、最初に述べたように、ソフトバンクの躍進が「常識を破る」ことからはじまるとすれば、案外1つ目のシナリオもあり得るのかもしれませんね。

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